「親父の柿の木」 partU                                  中秋

 

同じ題で以前雑感を書いたことがある。

家内と柿取りをして親父のことを思い出し、少し感傷的になったのも秋のせいかもしれない。

今年は彼女が留守だったので一人で柿を取ることになった。

 

この数年家内もいろいろと忙しく外出も多くなってきた。

ちなみに家にいる奥さんを「家内」と言い、留守の多い人は家内とは呼ばず「家外のひと」と

言うそうだ。テニス仲間からの話である。

 

今朝いつもと違いなにか庭が騒がしくて外に出た。

20羽を超える鳥達が柿の実を目当てに集まり、その中で尾長鳥とムクドリが柿の実を

めぐって互いに飛び交いながら縄張り争いをしていた。

おまけにいつもはおとなしい雀までが周りに集まり、なりゆきを見ている。

 

昨年同様 今年も親父の柿の木は豊作である。

柿は一年毎の周期で結実の量を調整すると聞いているが、我が家は年毎の差は少ないようだ。

一度枝を切りすぎて失敗して以来、素人剪定をしないようにしているせいかもしれない。

集まってくる小鳥たちが柿の実をついばむ様子を見ているのは楽しい。

なかでも目白が熟れた実だけ選んで食べ散らかす姿がとても可愛くて、あわててカメラを持ち出すこともあった。

高い枝でよく陽を浴びた熟成の早い実から小鳥達は攻める。

そんな場所はこちらも取りにくく、我々と小鳥の共生はうまくいっているものと思っていた。

そして少しずつ収穫し出来るだけ木で熟成をさせ楽しみたいと考えている。

 

それがなんと今朝は尾長鳥をはじめとする大群が庭に押し寄せ、周りの木や電線には

その予備軍までが待機している。

孫に取らせようとして低い枝に残しておいた物にまでやつらの手 いやくちばしが回るに

至っては怒り心頭に達し、持ち主をはっきりさせることにした。

例によって家内は家外のひと。一人で柿取りは大変だ。取った実を袋に入れながら木にすがり

移動するのはかなり体力が必要である。

梯子は重く木は折れやすく小枝は目を突く。熟した実は服を汚し、おまけやつらは周囲の梢で

ギャーギャーとわめき私に抗議をする。ヒッチコックの映画「鳥」を思わせる不気味さであった。

二時間ほど必死で取り終わり、ひと息ついていると早速数羽が舞い降りてきた。

実の無いことを確認しすぐに立ち去って行き、続いて待機部隊も一斉に退散してやっと

静かになった。

 

「どんなもんだ」とひとりで悦に入っているところでやっと家外の人の帰宅となった。

早速今年の初物を味わった彼女は「もう少し置いた方がよかったようね」 だってさ。

 

 

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