ストロボ撮影   2009.3.

 

入院中にベッドで見たWBC対中国戦、イチローがバッターボックスに入ると、球場のあちらこちらからフラッシュが焚かれた。これは意味があるのか?最近、花火や夜景を撮影に行くと、同様な光景にしばしば遭遇する。

 

 主にカメラに内蔵しているストロボに付いて、少し解説してみる。

1.    光の届く距離

 2項以下に説明するGNや撮影条件によって異なるが、28〜80mm程度のレンズを使用して撮影できる被写体の距離は最短60cmから最長7m位までである。従って、何十m或いは何百mも離れた観客席からバッターボックスのイチローをストロボで撮影しても電池が消耗するだけで全く効果は無い。カメラの設定をフルオートにしておくと、こんな無駄が生じる。

  また、近い距離の撮影は光のムラ、露出オーバーの原因となるので、自分のカメラに内蔵しているストロボの機能を確認しておこう。

2.    ストロボのガイドナンバー(GN)

 自分の持っているカメラのGNはいくつかご存知であろうか?またGNとはどんなことを意味するのであろうか?

 一眼デジカメに内臓しているGNは、10〜18程度が多い。まず手始めに、手持ちのカメラのGNを確認することからはじめよう。次にGNについて簡単に説明する。

 GNとは、ISO100で被写体から1mの距離で撮影する時の絞り値を表している。即ち、

 GN10のストロボなら、上記条件の時、絞りが10になるということである(因みにシャッター速度はカメラによって異なるが、通常1/180〜1/30位で同調する)。

 距離が2mなら、絞りはGN(10)÷2=5になるという事である。

3.    ISO感度との関係

 もし、ISO感度が変わった時は下記の係数でGNは変化する。

ISO

100

200

400

800

1600

係数

  1

 1.4

  2

 2.8

 4

  上の表は、ISO400に感度を上げて撮影する時は、GNは倍になることを意味する。即ちGN10のストロボでISO400、被写体から2mはなれて撮影する時の絞りは次のとおりとなる。

  10×2÷2=10(絞り)となる。また、絞り優先でf5.6とし、上記条件で撮影した時は、

   10×2÷5.6=3.5(距離)となり、3.5mまで使用できることになる。

4.    露出調整

 ストロボ撮影時の露出調整はどうするか?これは通常の露出補正と同じで、カメラにより異なるが、-2.0から+1位まで変更可能である。

 

5.    ストロボの光の特徴

 ストロボの光の色温度は、太陽光に近い。従ってホワイトバランスは、太陽光に設定する。

6.    ストロボ撮影に適さないレンズ

18mm以下の超広角レンズでは、ケラレが発生しやすい。10〜24mmレンズを使用した私の経験では、17mm以下では画面に一円玉くらいの暗い部分が発生した。これはカメラやレンズにより異なるが、画角の広いレンズを使用する時は、ストロボ撮影はしない方がよい。また、遠景は光が届かないので150mm以上の望遠レンズを用いて、ストロボ撮影することも少ないであろう。

7.    どんな時にストロボを使用するか

一般的には、暗い室内や夕景、夜景で近距離を撮影する時に用いられるが、日中、逆光に近い条件で手前の被写体が暗くなる時に、補助光として使用すると効果がある。

背景が明るく、近景が暗いときも同じように使用できるが、露出の設定がかなり難しい。このような時には、前記の露出補正をアンダーで撮影すると良いが、通常の撮影時に比べ、補正の効果は少ない。

8.    スローシンクロ

カメラによって異なるが、前記のようにストロボ撮影は概略1/45〜1/180のシャッター速度で行われる。背景が暗い時には、光が届く近景は適正露出になるが、遠景は真っ暗になる。遠景まで写したい時に使用するのがスローシンクロと解釈すればよい。

スローシンクロの機能を持つカメラなら、その設定をすればよいが、この機能を持たないカメラは、シャッタースピード優先にして、1/15程度以下で撮影すれば、遠景も近景も綺麗に撮影することが出来る。スローシンクロで撮影する時は、三脚を使用するのが原則。

9.    ストロボを使った特殊な撮影方法

内蔵ストロボは強い順光であるため、コントラストが強くなりすぎ、不自然な画面になることがある。このような時には、ストロボをハンカチなどなるべく色の薄い布で覆うと良い。

 上記の発想を逆に利用して、濃い色の布やセロファンで覆うと、近い被写体はその色で撮影できる。鳥居や人形を赤いセロファンで覆った外付けストロボで撮影して特殊な効果を狙ったことがある。白いバラを青いセロファンで覆ったストロボで撮影すれば、夢の青バラが誕生するかもしれない。

 

折角カメラが持っている機能を上手く使ってより良い写真を目指したい。